肥満症治療一般食で行う場合、摂取エネルギーの設定

肥満症治療食とは

肥満症治療食は、エネルギー制限が基本ですが、筋肉量を減らさない、また、代謝活性を落とさないようにする必要があります。それには、蛋白質をしっかり確保し、窒素バランスが負にならないようにするとともに、各種ビタミン、ミネラルを必要十分量摂取することが大切です。その方法として、調製食(フォーミュラ食)を用いる場合もあります。エネルギー成分(糖質、脂質)を極力減らし、蛋白、ビタミン及びミネラルは1日必要量を3袋で摂取できるように調製されたパウダー状のものを水に溶かして飲んでもらうものです。一般食3食のうち1回だけフォーミュラ食を用いる方法もあります。いずれにしても、肥満症治療食の効果は遵守率に依存し、いかに患者さんが納得、実施、継続できるかがキーポイントです。

減量を目的とする場合、総摂取エネルギーはどのくらいに設定すべきですか。

必要最低エネルギー量については、超低エネルギー食療法を参考にすると、蛋白、ビタミン、ミネラルを十分にとれば、600kcal/日でも可能です。それは、血糖が下がるとアドレナリンにより蓄積脂肪から脂肪酸、グリセロールが放出され、脂肪酸は筋肉のβ酸化系でエネルギーとなり、グリセロールは肝臓の糖新生系でブドウ糖となり、脳などで利用されるからです。

一方、最大許容摂取エネルギーは、基礎代謝(体重×25kcal/日)を基準とし、運動量に応じて、体重×40kcal/日までの間で設定します。ただし、肥満者の場合には、現体重をかけると、摂取過剰となるため、減量できません。BMI=22kg/㎡相当の標準体重をかけ、最低限の体力維持に必要な総エネルギーを求めます。これらを参考に、1,000~1,800kcal食の間から実施可能なレベルの肥満症治療食を選べばよいでしょう。

他の方法として、現在の1日摂取総エネルギーを調べ、そこから、例えば700kcal減らすと、700kcal÷7kcal (1g脂肪組織)=100gとなり、1日で100g減らすことが可能になります。遵守できれば、計算上は1ヵ月に約3kg減量できることになります。いずれにせよ、遵守率が問題で、患者さんが納得し、実施可能なレベルから始めることが大切です。

体格と身体活動量を考慮してエネルギー量を設定する場合、どのような手順になりますか。

エネルギー学的に考えると、基礎代謝を維持するためには25kcal/kg/日が必要とされています。消費エネルギーと身体活動量との関係は、身体活動量を歩数で見ると、5,000歩/日以下では25~30kcal/kg/日、5,000~10,000歩は30~35kcal/kg/日、10,000~15,000歩は35~40kcal/kg/日となります。標準体重を維持するには、前述のkg当たりの消費エネルギー量にBMI22kg/㎡相当量の体重を乗じた量を摂取すれば、十分なエネルギー量が担保されることになります。

蛋白質は、最低保持量をどのくらいに設定すベきですか。

減量時には、蛋白異化が起きないよう、蛋白質を十分量摂取する必要があります。基本的には標準体重 (BMI=22kg/㎡相当)×l.Og/日が最低限必要です。筋肉量を減らさないためにはさらに運動を加えることも大切です。

蛋白質は、どのようなものを選ぶべきですか。

必須アミノ酸9種を十分量摂取する必要があります。そのためには、動物性蛋白の乳蛋白、卵蛋白を基本とします。大豆蛋白のみではアミノ酸スコアが低く、欠如分を補う必要があります。なお、コラーゲンは分解·吸収されません。

肥満症治療食の蛋白•脂肪•糖質比

肥満症治療食の蛋白•脂肪•糖質比については、議論があるところです。日本ではかつて糖尿病の食事療法として糖質60~65%を推奨しており、日本肥満学会でもこれを踏襲し、糖質60%を推奨してきました。これに対し、蛋白を20%確保し、残りの脂質•糖質比について、糖質45%(低糖質食)と55%(高糖質食)で比較した調査によると、糖尿病患者では、前者で内臓脂肪減少や糖•脂質代謝の改善がよかったと報告されています。また、低糖質食のほうが減量を維持するうえでよかったとの報告もあります。インスリンはブドウ糖から中性脂肪への合成を促進する働きを有するため、糖質を過剰摂取すると、インスリン分泌が促進され、脂肪蓄積は助長されることになります。ただし、どのぐらいが糖質過剰なのかは、病態によって差があります。臨床現場では、糖質量を変えた食事メニューを実際に試み、体重、血糖、脂質、特にトリグリセライド、HDLコレステロール値の変動を観察しながら、判断するとよいでしょう。なお、これら組成差による冠動脈疾患発生への長期的影響は、わが国ではまだ確かめられていません。

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