肥満症治療によって生命予後の改善と肥満合併症の治療

肥満症治療で生命予後は改善しますか。

肥満症の減量療法

欧米の90万人のデータでは、BMI別の死亡率は22~25で最小になることが報告されています。BMIが25以上では5増加すると死亡率が約30%増加しますが、特に心血管系の疾患による死亡率の増加が大きく、糖尿病、肝疾患、腎疾患、癌なども増加するためと考えられ、肥満者の生命予後は悪いといえます。「高度肥満」では、生命に関わる重篤な疾患を合併する率が高く、生命予後はさらに不良です。ただし、単純にBMIのみで規定されるものではなく、脂肪分布、合併症、民族、遺伝子の相違も関与します。

減量治療で生命予後が改善したとの報告はこれまでほとんどありませんが、それは一般に内科的治療効果が十分でなかったことも一因です。高度肥満については、最近報告された減量手術後の長期予後調査で、著明な減量とともに、生命予後が改善していました。減量手術では、BMIの低下に加えて、種々合併症の改善作用があるため総合的な評価が必要ですが、肥満症治療の有用性を示すものと思われます。

肥満合併症で、内臓脂肪が原因の合併症と、そうでない合併症の区別はつきますか。

糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、脂肪肝などの代謝異常、虚血性心疾患、脳梗塞などの動脈硬化性疾患は、内臓脂肪蓄積との関連が特に強く、発症や病態の進展に、アディポカイン/アディポサイトカインの関与が示唆されています。

一方、睡眠時無呼吸症候群(SAS)や、変形性関節症などの整形外科的疾患、月経不順などは、体内の総脂肪蓄積量がより強く関与すると考えられていました。しかし、近年、これらについても内臓脂肪蓄積が増悪要因となっているとの報告が増えてきました。

減量治療によって、どのような合併症が改善しますか。

ほとんどすべての代謝関連合併症は、減量治療により改善すると考えられます。特に、糖尿病、脂質異常症、 高尿酸血症、脂肪肝などの代謝異常は、2~3%程度の減量でも改善が認められることがあります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)や整形外科的疾患の改善には、4~5%の減量が必要のようです。一方、悪性腫瘍発症およびその進行に対する減量の効果については、確立された成績は報告されていません。

食事療法

肥満関連腎臓病は、減量によりどの程度改善しますか。

肥満関連腎臓病を放置すると腎不全になり、糖尿病が合併するとさらに進行が加速すると考えられますが、減量により蛋白尿、腎機能が改善することが報告されています。肥満関連腎臓病の代表的な病理組織像(巣状糸球体硬化症、糸球体の肥大、糸球体毛細血管の拡張、メサンギウム細胞増殖•基質の増加、上皮細胞肥大など)も、減量により改善するとの報告があります。

また、睡眠時無呼吸は肥満関連腎臓病の増悪要因です。無呼吸の改善のみで肥満関連腎臓病が改善するかどうかは、はっきりわかっていません。

食事療法と薬物療法による減量で、合併症の改善度は異なりますか。

減量体重とさまざまな肥満関連合併症の改善度はほぼ一定の関係がありますが、食事療法と薬物療法では改善度に差のあることが知られています。また、食事療法の種類によっても改善度は異なります。

まず食事療法の種類による違いですが、一般に、同程度の体重減少がみられても、高蛋白·低糖質食のほうが低蛋白·高糖質食よりも、血圧低下、血糖改善度が高いと報告されています。また、高蛋白·低糖質食のほうがリバウンドしにくいといわれています。

次に、食事療法と薬物療法では、同じように2~3kgの体重減少がみられても、薬物療法(マジンドール)による血圧および血糖改善度は高蛋白·低糖質食に比べて低いが、3kg以上減量が進むと同等に向上するとの報告があります。減量治療を行うにあたっては常に、血圧や代謝関連データの改善、合併症改善を確認しながら進めることが求められます。

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