肥満症外科治療において現在行われている主な術式及び作用原理

調節性胃パンディング術(adjustable gastric banding:AGB)

AGBでは、腹腔鏡下で、シリコン製のバンドを胃上部に20~30ml程度の小さな袋(胃嚢)が形成されるように巻きつけます。バンドの内側にはバルーン(風船)がついており、カテーテルを介して、皮下に埋め込まれたリザーバーにつながっています。リザーバーに滅菌生理食塩水を注入すると、注入量に応じてバルーンが膨らみ、バンドを巻いてある部分の胃が締まります。これにより、食事摂取量が減り、減量効果が得られます。

スリーブ状胃切除術(sleeve gastrectomy:SG)

SGでは、胃の外側(大弯側)を切除し、縦長に形成します(胃管)。これにより、胃の容量は約1/10に減少します。AGB同様、食事摂取量を減らすことで減量効果を期待するというコンセプトの術式ですが、SGで切除される噴門部胃は、食欲刺激ホルモンであるグレリン(ghrelin)の分泌細胞であるA細胞が集中して分布しており、SG術後には血中グレリン値が大幅に低下することが示されていることから、グレリンなど消化管ホルモンの関与も示唆されます。SGは新しい術式で、RYGBやAGBのように長期成績は十分に示されていませんが、少なくとも短·中期成績は良好で、比較的シンプルな手術であることから、近年、世界的に施行件数が増加傾向にあります。

開腹で行う場合と、腹腔鏡を用いて行う場合があります。わが国では、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が先進医療として承認されています。

ルーワイ胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass:RYGB)

RYGBでは、胃を20~30ml程度の小さな袋(胃嚢)と、それ以外の部分(残胃)とに切り離します。次に、上部小腸(空腸)をトライツ靭帯(十二指腸と小腸との境界)の50~100cmほど遠位側で離断し、一方の断端を挙上し、胃嚢とつなぎます(胃·空腸吻合)。続いて、胃•空腸吻合部から120~200cmほど遠位側の小腸と、他方の空腸断端とを吻合(空腸•空腸吻合)します。胃•空腸吻合部から空腸•空腸吻合部までをalimentary limb、トライツ靭帯から空腸•空腸吻合部までを biliopancreatic limbと呼びます。食物が入る部分の胃容量が小さくなることで食事摂取量が減少し、さらに、残胃~十二指腸~biliopancreatic limbを食物が通過しないこと(バイパス)で吸収が抑制され、効果的な減量が得られます。開腹で行う場合と、腹腔鏡を用いて行う場合があります。

日本人では胃癌の発生が多いことから、残胃に癌ができても発見できない可能性があります。ピロリ菌陽性例など、胃癌発生のリスク因子を有する場合は注意が必要です。

胆膵路変更•十二指腸バイパス術(biliopan-creatic diversion with duodenal switch:BPD/DS)

BPD/DSは、胃の部分切除と小腸の大半をバイパスするもので、食物と消化液が混ざる部分の小腸(common limb)を50~100cmと極端に短くすることが特徴です。減量効果が高く確実で、しかもリバウンドが少ないとされています。しかし、吸収抑制効果が強く、長期的には栄養不良、筋肉減少症、骨粗鬆症などが起きやすいため、栄養成分の補充および厳重な栄養状態のモニタリングが必要です。

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