肥満でもたらされる糖尿病と高血圧症の発生機序

肥満症は、全身臓器障害、内分泌·代謝異常を伴っており、その診療にあたっては、医師をはじめとする医療者に、 精神面も含め、全人的医療を行うことが求められます。他科の専門医に相談することも大切ですが、肥満症治療担当医は他科の知識も最低限、把握·理解しておくべきであり、常に集学医療の観点から支援を行うことが、よりよい医師·患者関係構築のための第一歩となります。

以下、各合併症について、診断法、肥満の関与機序、減量による改善度について簡単に述べていきます。
*基本的には、日本肥満学会の「肥満症診断基準2011」に準ずる。

2型糖尿病、耐糖能異常

肥満は、2型糖尿病、耐糖能異常の主要な促進因子です。糖尿病の診断の流れについて、糖尿病は空腹時あるいは随時血糖高値とHbA1c高値から診断可能であり、必ずしも経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を必要としません。しかし、肥満者は糖尿病の前段階である耐糖能異常を伴うことが多く、その診断にはOGTTが必須です。肥満では、肥大した脂肪細胞からインスリン感受性調節物質の分泌異常で全身臓器もインスリン抵抗性状態となって、糖尿病を悪化させると考えられています。

糖尿病が確認された際は、当然ながら、網膜症、腎症、神経障害、さらには、動脈硬化の進行度についても検査する必要があります。若年時に高度肥満があった人は、耐糖能異常の段階でも臓器障害が進むため、30代後半で網膜症の進展がみられたり、心筋梗塞に罹患したりしている方もいます。

肥満者においては、摂取エネルギー量の制限と運動による消費エネルギー量の増加、そして体重減少によるインスリン抵抗性の改善効果により、耐糖能の改善が期待できます。受診時の体重から7%減をめざした食事療法の実施、運動習慣の是正により、糖尿病の発症が58%減少すると報告されています。BMI25以下であっても、22前後を目標に2~3kg減量するだけで、血糖値に改善がみられることはよくあります。

高血圧

高血圧は肥満症の主要な合併症であり、肥満者は非肥満者と比較して高血圧の出現頻度が2~3倍になるとされています。

高血圧基準値は診察室血圧で140/90mmHg以上とされていますが、『高血圧治療ガイドライン2009』(日本高血圧学会)では、血圧の値とリスク要因から脳心血管リスクを層別化し、高血圧患者の血圧管理をするよう推奨しています。糖尿病のある人の管理目標値は130/85mmHgです。

高血圧は、内臓脂肪の過剰な蓄積によるメタボリックシンドロームの重要症状であり、肥満によって高血圧が発生する機序として、アンギオテンシンⅡの産生が高いことやカテコラミン高値の関与があります。また、肥満では食塩感受性高血圧に陥りやすく塩分摂取量の多さも高血圧の原因として指摘されています。

日本の非高血圧者を8年間観察した研究によると、腹部肥満者に高血圧の発生が2.33倍多く、内臓脂肪蓄積が高血圧の発症要因であると報告されています。また、大規模臨床試験のメタ解析では、平均5.1kgの減量によって収縮期血圧4.44mmHg、拡張期血圧3.57mmHgの低下が得られており、減量が高血圧の治療に有効であることが示されました。

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