手術の説明に関する患者さんの理解度、また全身検索や精神面の検討が必要か?

患者さんの理解度の判断

高度肥満症患者は、新たな説明に対して理解が十分でないことがよくあります。可能な限り、術前にご家族、必要に応じて職場のキーマンなども交えて説明し、本人が周囲の納得を得ているかを確認することが大切です。また、その際には、医療側から周囲の方々に長期的な支援を要請することもあります。

術前にフォーミュラ食などの食事療法を試み、その適応性から患者さんの理解度、納得度を判断することもできます。

術前の全身検索が必要ですか

高度肥満に至った生活歴、リバウンドも含めた減量治療歴を聴取することが大切です。その経過から、その人の行動様式を読みとると、術後の長期フォローに役立ちます。全身機能検索では、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肝機能障害、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群、膝·腰関節疾患などの検査が重要です。重篤な術後合併症となる深部静脈血栓症の関連検索も重要です。

術前の血糖コントロールが悪いと術後の血糖値が高くなり、糖尿病の寛解率が下がり、減量効果も悪くなることが知られています。したがって、高くてもHbA1c8%台のコントロールが必要です。

脂肪肝も肥大が高度になると、術野の確保が難しくなり、手術が困難になります。これに対し、術前2~4週間の超低カロリー食で肝臓肥大を抑制すると、手術時間·術中合併症を減らせることが報告されています。

術前に教育入院を実施している場合

外来での診察では十分な聞き取りができず、互いに行き違いが生じることがあります。術前に2週間程度の内科入院を実施すると、全身検索を丁寧にでき、隠れている合併症の発見と、その緊急治療が可能です。血糖コントロールが不良であればそのコントロールを、睡眠時無呼吸があれば持続的陽圧呼吸治療(CPAP)を行います。さらに、肝臓肥大や隠れた慢性心不全の発見、治療などのためにも有用な期間となります。

加えて、先にも述べたように、患者さんは入院期間中にさまざまな際立った行動様式をとることがありますが、その観察期間でもあります。入院中にフォーミュラ食を経験することは、患者さんにとって術後摂取栄養組成の知識獲得と体験の両面で利点があります。

これらの観察を通じて、患者さんの過去のみならず、新たな取り組みへの受け入れ度合い、理解力などを医療スタッフが把握できます。その情報は術後の生活や食事管理上の参考となり、術後長期フォローを行ううえで大いに役立ちます。

チームでのアプローチの進め方について

高度肥満症患者は、身体的、精神的に多くの問題を抱えており、多面的なアプローチが必要なため、外科手術に際しては、外科医のほか、内科医、精神科医、さらには看護師、栄養士、臨床心理士、理学療法士など、多職種による分析、指導が必要になります。しかし、多職種が関与すればするほどアプローチは複雑化し、連携不足からトラブルが発生する可能性もあり得ます。

したがって、個々例の症例検討会が必要となり、全スタッフが一堂に集まり、さまざまな角度からの検討がなされ、かつそれを共有するには症例カンファレンスが有効です。具体的には、内科的合併症の状況、治療状況、看護的側面、栄養士の意見、精神科医あるいは臨床心理士の意見がその場で語られ、手術適応、術式、起こりうるべき合併症と対処法、精神心理面でのサポートなどについて見解を統一しておくことが大切です。

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