外科治療は高度肥満の有効治療方法として行われている

近年、肥満は世界中で問題になっています。比較的肥満が少ないといわれる日本でもBMI25以上の肥満は男性で約30%に達し、BMI30以上は国民全体の3.5%、BMI35以上の高度肥満は0.5%に相当する約60万人はいると考えられています。

高度肥満は外科治療の対象とされ始め

高度肥満に対する内科的治療はこれまでいくつか試みられてきました。しかし、長期的減量効果を確実にあげる方法については、まだ十分に確立されていません。そうした状況下で、外科治療が長期的減量効果をもたらしていることが示され、世界的に高度肥満は外科治療の対象とされ始めました。その結果、肥満外科治療は減量とそれに伴う肥満関連合併症の改善、ひいては患者さんの生命予後もよいと報告されるに至りました。なお、美容目的の脂肪吸引術などとは、まったく区別される手術です。

内視鏡手術

外科治療は「胃の縮小を伴う手術」と定義されています。胃の縮小を行うことにより食事摂取量を減らします。手術法として、胃-小腸バイパスをつくり、栄養吸収を減らすことを付加する方法もあります。手術法には、開腹術と内視鏡手術(腹腔鏡下手術)があり、現在では後者が主流になっています。手術による傷が小さく、侵襲が少ないため、早期の離床、退院、社会復帰が可能だからです。また、内視鏡手術(腹腔鏡下手術)に熟練した外科医が行えば、開腹手術より合併症が少ないともいわれています。

外科治療は単純に胃を小さくして食事摂取量を減らすだけではなく、消化管ホルモン動態が変わり、食欲を促すホルモンが減少し、満腹感を促すホルモンが増加するため、術後の空腹感が少なく減量できると言われています。

外科治療の実施件数

外科治療の実施件数は日本ではまだ少ない状況ですが、世界中では年間35万件近くも行われており、一般的な治療方法です。米国だけでも年間23万件が行われており、大腸癌、胃癌の手術よりも多くなっています。日本では1982年から行われ、2002年に腹腔鏡下手術が始まるまでは20年間で100例程度でしたが、腹腔鏡下手術が始まってからは年々増加し、現在までに約600件の腹腔鏡下肥満症手術が行われています。しかし、年間176件(2012年)という数は、アジア諸国に比してもまだ少ない状況です。

近年、胃バイパス術は術後早期の体重減少が十分得られる前から糖尿病の改善効果が高いことが報告され、「Metabolic surgery」という概念が提唱され始めました。国際糖尿病連盟では糖尿病治療の選択肢の一つに挙げています。

外科手術で注意すべきなのは

外科手術で注意すべきは、肥満症患者、特に外科手術の対象となる高度肥満の人には、背景に多くの臓器障害以外に、生活背景と精神面にさまざまなトラブルを抱えている人が多いことです。術前の面接時に、入念に生活背景の聞き取り、精神面の評価を行い、術後も 食事療法は必須であること、必要に応じて精神的側面へのサポートを受けることなども理解してもらってから、手術を実施することが大切です。それには、内科医、ときには精神科医とも連携し、栄養士、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどとチーム体制を組み、治療を進める必要があります。

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